米国のロックバンド「Third Eye Blind」のリードギタリスト、Kryz Reid氏には、ツアーに行くときに必ず持っていくものがあります。彼の貴重なギターコレクションは、ツアー機材の中に大切に収納され、彼と共にツアーを回るのはもちろんのことですが、彼のプライベートバッグには肌身離さず持ち歩いているツールがたくさん詰まっています。
彼のバッグの中にはカメラ、レンズ、ジンバル、ドローン、SDカードリーダー、スマートフォン、ヘッドホン、ノートPCなどなど。それぞれにデータストレージが装備され、彼らの魔法のようなパフォーマンスをしっかりと記録してくれます。Reid氏はまた、ツアー中に映像をキャプチャし保存して、アーカイブそして編集できるよう、ポータブルストレージ(HDD&SSD)も携えているのです。
Reid氏は、ミュージックアーティストであると同時に音楽、写真、ビデオ、映画のクリエイターでもあります。彼は最近、自身のバンドによるツアー「Summer Gods: 25 Years in the Blind」を終えたばかりで、そのコンサート映像、舞台裏のインタビュー映像、そしてツアー参加者だけが観ることのできる秘蔵映像など、トータル16TBもの記録データを携えて帰宅しました。ビデオグラファー、編集者、アニメーターとしても経験豊富なReid氏は、ユニークな彼独自の手法でファンやフォロワーなどの視聴者とツアーでの体験を共有しているのです。
写真家の父をもつReid氏は、大学で映画とアニメーションを専攻しました。「私は生まれたときからカメラに触れながら育ちました」と彼は回想しています。
アイルランドのダブリンで生まれたReid氏は、8歳のときに家族とともにキルデア州に移り住みました。学生時代はバンドでギターを弾いていましたが、常にカメラを持ち歩き、撮影していました。バンド仲間から「俺たちが大物になるまで公開するなよ」と言われていたそうですが、いまとなっては、その頃の姿をフィルムに収めておいてよかったと、振り返っています。
Reid氏は、2010年にThird Eye Blindに加わったときに、ギターと共に撮影機材も持ち込みました。
ライブアクションにアニメーションや特殊効果を組み合わせてミュージックビデオを制作し始めたReid氏は、「実は、最初はあまり乗り気じゃなかった」と語っています。「メンバーが喜んでくれるかどうか不安だったんです」。
Third Eye Blindのリードボーカルで創設者のStephan Jenkins氏はバンドのテイストを深く理解し、自分たちのブランドを正しく維持できる人をメンバーにすることの重要性を理解していた、とReid氏はいいます。Reid氏はThird Eye Blindのためにミュージックビデオやドキュメンタリービデオを数多く制作しており、それはメンバーにも、そしてファンにも受け入れられました。「自らのバンドを(ブランドを)正しく理解するメンバーをバンドに置く」というJenkins氏の想いが正しかったことが証明されたのです。
Reid氏はサンディスク製の大容量SDカードやmicroSDカードを使用して、カメラを舞台のさまざまな場所に設置し、録画ボタンを押しっぱなしにする手法でライブを撮影しています。
「私自身がバンドのメンバーですから、私が撮影していても、メンバーのみんなはカメラの存在を忘れてしまうんです」とReid氏は語ります。「舞台裏では、彼らの素の面白い会話が撮れます。恐らく、私以外の誰にも撮れない映像だと思います」。
コロナ禍により2020年のツアーが突然中止になったとき、Reid氏とJenkins氏はファンとの関わりを維持するためのコンテンツを制作することに注力しました。
「もしわずか一度でもライブができたなら、それを撮影して共有するコンテンツを制作できたでしょう。でもコロナ禍ではそれは無理だったんです」と彼は語ります。
Reid氏は、新型コロナウイルスが広まり始めた頃、自転車でJenkins氏の自宅まで通い、マスクをしてソーシャルディスタンスを確保したうえで、SNS用に動画を撮影しました。それをYouTubeの公式チャンネルに「100 Blind Days of Lockdown」として公開しました。リードボーカルの自宅で練習する姿など、普段観ることのできない貴重な映像が収められたのです。彼らはまたインスタライブやポッドキャスト、ラジオ番組なども制作し、数多くのファンとバーチャルで交流しました。
コロナ禍でも、彼らはスタジオに限られた人数で隔離されながら、新しいアルバムのレコーディングを続けました。ようやくライブを再開できるようになったのは、ベンチュラ郡のフェアグラウンドでのドライブインコンサートでした。観客は車内のカーラジオから流れるバンドの演奏に聴き入りました。
このドライブインコンサートは、コロナ以前に32都市を回った「Summer Gods」ツアーとはまったく対照的なものでした。
ツアー中、Reid氏は野外ステージの上からドローンで撮影した映像を含むコンテンツをSNSのアカウントに投稿し続けました。
ゆっくりと、少しづつ、ライブコンサートが再開されました。各公演の開始前、彼はステージ上でメンバーと共にサウンドチェックをした後、撮影スタッフと共に会場内を歩きまわるのです。録画用カメラの位置調整を手伝い、カメラアングルを細かく指示します。ライブ中は撮影スタッフがカメラを回して、毎回欠かさず撮影を行いました。各公演が終わると、彼はステージ前からデータストレージを回収し、複数のカメラ映像を同期させる作業を行っていました。
そしてツアー映像を日付ごとのフォルダに分類し、スペシャルゲストの登場シーンや滅多に演奏しない曲の演奏シーンなど、SNSに公開したい映像にフラグを立てる作業を行います。その他の未公開映像にはラベルが付けられ、彼が帰宅するまで大容量ドライブに保存するという映像編集作業を毎日続けました。
「すべてを保存しておけば、ツアーのダイジェスト版やコンサートのショート映像をいつでも制作してSNSに流すことができます」。
Reid氏は「Summer of Gods」ツアー終了後、ロスの自宅の裏庭にオーディオとビデオ編集用の防音スタジオを建設しました。
「しっかりと防音されるので、夜中の4時にジャムセッションをしても近所迷惑にはなりません」と語るReid氏は、このプライベートスタジオでナレーション、ボーカル、ビデオ、ポッドキャスト、そしてもちろんジャムセッションも行う予定だそうです。
「フィルムという手に取れる実物の保管が一般的だった頃と異なり、いまはすべてがデジタル化されてデータとして保存されるので、簡単に記録や保存が出来る反面、失う場合も一瞬です。貴重なライブ映像を手違いによって消してしまうようなことがないように常に注意しています」とReid氏は語ります。彼は大本のSSDに保存した映像をRAIDシステムにバックアップし、さらにクラウドサービスを利用することでリスクを軽減させ、データの保護につとめています。
彼は長年ウエスタンデジタル社製のストレージ製品を愛用しています。すべての映像は、サンディスクのExtreme PROメモリーカードに保存され、SanDisk Professionalの堅牢なポータブルモバイルSSD G-DRIVETMにアーカイブされています。
「新しいテクノロジーが登場するたびに、より小さく、より大容量に、そしてより高速になっています」とReidは語っています。「ドローンのカメラには、親指の爪ほどしかない小さな、でも1テラバイトも記録できるmicroSDカードが搭載されています」。
彼は最近、ツアー映像を編集するために、WD RedTM Plus 14TB(※) NASハードディスクドライブとQNAP製の 4ベイThunderbolt 3 NASユニットを新たに追加しました。この新しいデータストレージによって、これまで以上に大量のビデオを保存し、編集することができるようになりました。
「これほどの大容量ストレージが使えることは、本当に画期的なことです」。
「カメラをセットアップして、アングルを決めて、録画ボタンを押せば、60日間分の4K映像が保存されるんです」とReidは語ります。
彼の視線はいま、動画編集や特殊効果、ミキシングといった作業用のノートPCに釘付けになっています。次のツアーまでにReid氏は新しいスタジオを自分の隠れ家兼創造的空間としてさらにバージョンアップさせる予定です。
彼はテラバイト級コンテンツクリエイターなのですから。
※…1MB=100万バイト、1GB=10億バイト、1TB=1兆バイト。実際のユーザー容量は動作環境により少なくなる場合があります。
著者: Anne Herreria
※Western Digital BLOG 記事(NOVEMBER 8, 2022)を翻訳して掲載しています。原文はこちら。
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