2023年09月08日
M.2 SSD: 未来のフォームファクターの現在

フラッシュメモリーは、半導体とNANDウェーハの力によって、あらゆる形や大きさに変化します。この柔軟性が、フラッシュドライブからSDカードまで、さまざまなフォームファクターに形を変え、ストレージを発展させました。M.2 SSD(エムドットツーと発音)は、その比類ないスピードとスリムなサイズにより、市場で最も普及したフォームファクターの1つとなりました。

M.2 SSDとは?

ソリッドステートドライブとフラッシュメモリーが初めて市場に登場した時、技術者たちはまだこの新技術を活かす最善の方法を模索している最中でした。したがって、当初のSSDは、単に既存のコンピューターに組み込まれているハードディスクドライブを置き換えるためだけに使われたことから、HDDと同じフォームファクターを継承しました。
ウエスタンデジタルのSSD製品管理ディレクターであるYuval Alpertは次のように述べています。「SATAをベースにした最初のSSDは、HDDと同じフォームファクターで製造されました。同じ2.5インチのケースで、ケーブル接続も同じでした」。
しかし時が経つにつれ、エンジニアはこの新技術への理解を深めていき、2.5インチの枠に囚われずに考え始めました。フラッシュは驚くほど柔軟性が高く、ほぼあらゆる形状に変えることができます。箱型に固執する必要がないことに気づいた業界は、同時にNANDのユニークな特性を活用した新しいタイプのドライブを創造したいと考えました。
そしてM.2世代が来ます。M.2とは、板ガム状のドライブで、PCのマザーボード上にあるM.2コネクタスロットと呼ばれるのソケットに直接挿入されます。最初は、HDDの占めていたエリアの小型軽量化を目的として、HDDのSATAインターフェースを継承した製品がリリースされました。
その後エンジニアは、継承されたSATAインターフェースと2.5インチフォームファクターの限界を打ち破ることに成功しました。M.2は、特にPCIeとNVMeの新しいプロトコルとインターフェースにより、フラッシュメモリーが本来持つ速度を引き出しました。現在、M.2ドライブは、NVMeとPCIe Gen 4の並列性を利用することで、SATAベースのSSDよりも12倍も高速に動作します。
「現在、PCIeやNVMeに代用される高性能インターフェースへの移行が進んでいます」とAlpertは述べています。「SATAと比較したPCIeの長所は、SATAでの限界となっているパラレルレーンより高いスループットが発揮できることです。これにより、PCはフラッシュストレージが独自に持つ機能を有効に活用することができます」。

最適な用途は?

M.2 SSDは、ウルトラブックやタブレットを念頭に置いて設計されているため、こうした用途に最適となっています。M.2ドライブの小さくて薄いフォームファクターは、サイズ、重量、可搬性を重視するデバイスにとって貴重な存在です。ケーブルを使用せずに直接マザーボードに取り付けられるため、他のコンポーネント用のスペースを確保することもできます。
「今のほとんどのノートPCは、2.5インチのドライブも収められません」とAlpertは指摘します。「M.2は2.5インチよりもはるかに小型です。PCの設計者は、空いたスペースを利用して、もっと大きなバッテリー、より強力な冷却機構、追加のストレージなど、他の周辺部品を搭載することが可能になります」。
ビデオゲームもまた、M.2 SSDの圧倒的な性能と小さなサイズから恩恵を受けます。ゲームの制作者にとっては、ストレージが高速化されたことで、ゲームマシンがテクスチャやシェーダーなどのより大きく詳細なアセットを、より高速にロードしレンダリングできるようにするメリットがあります。これにより、プログラマーにとっては創造力や表現力を発揮する機会が広がり、細部にわたって鮮やかで臨場感のあるシームレスな世界を生み出すことができるようになります。
ゲームプレイヤーにとって、このフォームファクターはさらに実用的なメリットをもたらしてくれます。ビデオゲームのサイズが100GBを超えて膨れ上がっている今、SSDの重要性はこれまで以上に増しています。M.2 SSDの性能は旧来のSATAより優れており、ゲーミングPCも小型化したM.2ドライブにより解放されたスペースの恩恵を受けています。ストリーマーやeスポーツのプロは共に、作業用の膨大な処理能力を必要とし、GPU、RAM、特に冷却システムを追加するスペースが極めて貴重になります。
M.2のフォームファクターは非常に柔軟性があり、産業用途のフラッシュ製品にも適用できます。自律走行車向けに設計された製品や、IoT Edge Gateway向けの高耐久性ソリューションは、M.2 SSDの速度、消費電力、サイズのメリットを活かすことで、新たな可能性を創出することができます。

イノベーション

ウエスタンデジタルは、卓越したM.2規格に準拠した製品をすでに自社ブランドで提供していますが、M.2のイノベーションにおける同社の役割はM.2規格そのものの制定から始まりました。同社のポートフォリオにノートPC、タブレット、ワークステーション、自動車などにM.2ソリューションが搭載される以前から、800社を超える企業が参加するコンソーシアムであるPCI-SIGと協力して、PCIe(PCI Express)などの周辺機器相互接続(PCI)技術のアプローチを標準化しました。
ウエスタンデジタルは、メンバーの一員としてM.2規格の策定に助言し、ストレージの専門知識を活かして、新しいフォームファクターが確実に将来を見据えて設計されるよう尽力しました。その形状は、将来のビッグデータを活用するのに十分高速な読み書き速度を備えた超薄型デバイスとして策定されました。
同社は、OEMベンダーと緊密に連携しながら、リモートワークなどの現代の課題に取組み、データの潜在能力を解き放つドライブを創り出しています。進化している職場では、ビデオ通話、バーチャルプライベートネットワーク、要件の厳しいアプリケーションでのマルチタスキングなどが当たり前になっている中で、M.2によりノートPCは確実に技術とビジネスのスピードに追従することが可能になります。
ウエスタンデジタルは、M.2製品のリーダーとしての地位を確かなものにしています。Fast Companyは最近、WD_BLACK製品により、ウエスタンデジタルをゲーム業界での革新的な企業トップ10に選出しました。同社の最新のゲーム専用ドライブであるWD_BLACK SN850Xは、猛烈なゲームスピード、持続的な最大パフォーマンス、自社製SSDヒートシンク設計など、WD_BLACKを業界リーダーに押し上げた典型的な例と言えます。同社は、フラッシュ製造の垂直統合と、技術的な専門知識、およびビデオゲーム開発者やPCメーカーとの強力な関係を活用することで、M.2開発において主導的地位を維持しています。

M.2 SSDの未来

将来を見据えると、M.2 SSDは華やかなゲーマーや超薄型ノートPCだけでなく、他の用途でも利用されるようになるでしょう。M.2は、Alpertの目にはすでにどこにでもあるユビキタスデバイスのように映っています。
「現実を見ると、M.2は広範にわたって採用されています」と彼は語ります。「実際、新しいPCは皆、M.2スロットを備えて設計されています。そして、M.2フォームファクターのNVMe SSD、またはHDDを搭載して販売されています。古いSATA SSDは段階的になくなりつつあります。
世界のデータの90%は過去2年以内に生み出されたものです。データストレージの凄まじい需要に応えるために、あらゆる種類のストレージドライブとテクノロジーがその一翼を担っています。その中でも、その驚異的な速度と柔軟性のあるサイズを考えれば、なぜM.2がこれほどまで普及したかは容易に想像することができます。
「M.2はフラッシュストレージの中でも最も重要な製品です。もしもデータセンター用途以外のストレージを探しているのであれば、M.2が解決策になります。M.2は高速でコンパクトなフラッシュメモリーを必要とする、あらゆる消費者に最適な製品です」とAlpertは述べています。

「M.2こそが、まさにコンシューマSSDの標準フォームファクターなのです」。

著者: Thomas Ebrahimi
※Western Digital BLOG 記事(NOVEMBER 15, 2022)を翻訳して掲載しています。原文はこちら

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