製造業のデジタルトランスフォーメーションは、大小あらゆるシステムに無数の変化をもたらしていることから、革命と呼ぶにふさわしいものです。過去3度の産業革命は、労働の本質や人間と自然との関係を変えました。第4次産業革命(4IR)も同様ですが、過去の革命とは重要な違いがあります。
4IRは地球と人類を保護し、人々の生活の質を向上させる形でシステムを変革する、全くユニークな機会を提供します。よりスマートなサプライチェーンから労働者のリスキリング(再教育)まで、4IRは世界中でより公正でサステナブルな経済をもたらす好機なのです。
世界の人口が増加するにつれ、需要と生産が地球に与える影響も甚大になっています。Inez Hua博士にとって、この生産と地球のバランスは、彼の学術的および専門的キャリアにおける中心となる命題でした。Hua博士は、米国インディアナ州のパデュー大学で土木・環境・生態工学の教授を務めていますが、1年間の特別研究期間中に、ウエスタンデジタルにおいて技術アドバイザーとして活躍しています。その研究内容は、産業と製造システムにおける環境の持続可能性に関するもので、彼女にとって非常に興味をかき立てられている分野です。
「持続可能性は活力を生み出すものです。つまり、生産性を拡大するレンズのようなものです」と彼女は語っています。Hua博士が関心を寄せている分野のひとつに、循環経済(※)があります。たとえば、ハードディスクドライブなどの電子機器が、製品ライフサイクルの中でどのように変遷していくのかというようなことです。
Hua博士は次のように説明しています。「現在、生産は一方通行です。一方の端から材料や部品が入り、もう一方の端から製品が出ていきます。私たちにはまだ、製品を回収して逆方向に送り返す能力はありません。しかし、4IRのおかげで、その可能性について検討し始めることができます」。彼女は、4IRの技術に牽引されることで製造業者は地球に与える負担を軽減できると考えています。
「4IRは製品の製造段階のみならず、ライフサイクル全体で考えることができると思います。4IRは製造を支援するのはもちろんのこと、製品のライフサイクル全体にわたって持続可能性を高めることができるでしょう。単に製造だけのものではないのです。材料の準備から始まり製品寿命が尽きるまでのすべてです」と彼女は語っています。
Hua博士は、これらの変革は3Dプリンタによる積層造形や分散ネットワークを介したサプライチェーンルートの最適化など、広範囲に及ぶと力説しています。しかし、これらすべてのプログラムの成功に欠かせないのは、データを収集し、それに基づいて行動する能力です。
「データ駆動型の意思決定を下す時に役立つインテリジェントなシステムがあれば、個々の製品において1~2%の違いを生むことができるでしょう」と彼女は付け加えます。「それはお金を運用するようなものです。わずかなお金をあちこちで貯めていけば、それが積み重なり大きな違いが生まれます」。
彼女は、地球への影響をゼロにすることは現実的ではないことを良く認識しています。しかし、将来の世代に向けて地球を守るために、自然と調和した関係を築くべきだと主張しているのです。
「確かに、当面の間はゼロインパクトを実現するのは無理でしょう」と彼女は語ります。「持続可能にするということは、私たちが将来の世代のために地球を維持するということです。地球が持つ再生能力を理解して、その範囲内に抑える必要があります。
※…循環経済について。環境省ホームページはこちら。
第4次産業革命は、これまでの傾向を逆転させる機会を提供するとともに、世界中のコミュニティに富を生み出す機会を拡大します。ウエスタンデジタルのグローバルオペレーション戦略担当バイスプレジデントであるJackie Jungは、この変革を労働者と経済のために実現することに情熱を注いでいます。Jungは次のように語っています。
「繁栄、人々、地球。私はこの3つに焦点を当てています」。
Jungは、ウエスタンデジタルでの仕事を通じて、同社の技術、持続可能性、および労働力の強化に努めています。Jungとそのチームは、IoTセンサーと機械学習を実装し、データを活用することで、ウエスタンデジタルのタイとマレーシアにある施設を世界経済フォーラム(WEF)が運営するグローバルライトハウスの認定取得施設へと変貌させました。これらの施設は、4IRの導入を先導し、産業革命を達成する最良の事例になります。
彼女はこの認定取得に際して、次のように語っています。「私はデータ分析技術を信じています。当社とこれらの工場、そしてそこで働く人々に栄光と大きな誇りをもたらしてくれました」。
この工場で重要とされているのが人間的要素であり、Jungもそれに情熱を注いでいます。彼女は、工場が繁栄するためには、労働者がその目標に積極的に関与し、教育訓練を受ける必要があると考えています。
「産業革命が起こるたびに雇用は失われましたが、破壊されたわけではありません。人々の生活は一変しましたが、テクノロジーを恐れて生きるのではなく、人々が前を向き、テクノロジーの恩恵を享受できるよう支援すべきです」とJungは述べています。「その一環として労働者の教育があります。もうひとつが、より価値の高い新しい雇用の創出です。反復作業ではなく、より安全で社会的責任のある仕事です」。
今後10年間で10億件以上の仕事がテクノロジーによって変わっていくでしょう。Jungはすでに将来に向けて当社の労働者をリスキリング(再教育)する方法を考えています。
「私たちは、常に“自分がこの工場を支えてきた”と考えています。だから“自分は現場にいなければならないんだ”と思っているのです」と彼女は語ります。「しかし、データがあれば仮想現実や他のツールを使うことができるので、その考え方は改めるべきです。このテクノロジーは、パラダイムシフトに挑戦し、想像できないことを想像する力を与えてくれます。
これらの高尚な目標を実現することは、今日における主要な課題のひとつになるでしょう。地球を回復させ、自然との調和のとれたバランスを見つけることは、数十年にもおよぶ世界的な取り組みになります。より優れたトレーニングと仕事で世界中の労働者を勇気づけ士気を高めることが、経済を発展させ、地域社会を支えるのに役立つでしょう。
繰り返される産業革命の4回目は、リセットするための貴重な機会になります。データを活用し、未来につながるテクノロジーを実装し、地球と人類の繁栄のために努力することが我々の当面の焦点となるでしょう。不安に思う方もいるかも知れませんが、Jungは奮い立ち、自信に溢れています。彼女は語ります。
「私は人間が持つ可能性に大きな刺激を受けています。そして、テクノロジーは人間の潜在能力を高めることができるのです」。
著者: Thomas Ebrahimi
※Western Digital BLOG 記事(OCTOBER 7, 2022)を翻訳して掲載しています。原文はこちら。