かつてはハリウッドの特撮でしか体験できなかった、3Dホログラフィックは、メタバースの進化と共に主流になりつつあります。
米Metastage社は、ロサンゼルスにある106台のカメラを備えた巨大なスタジオを利用して、そのボリュメトリック(三次元)キャプチャ技術によって、データと没入型の複合現実体験を実現する企業です。
同社は、ニューヨークファッションウィークのファッションシーンをリビングルームに持ち込んだり、恐ろしいホラー映画の悪役をスマートフォンの小さなスクリーンに召喚できる初のボリュメトリックSnapchatレンズを開発するなど、創業以来200以上のプロダクトを生み出してきました。
Metastageの制作責任者であるSkylar Sweetman氏は、次のように語っています。「ボリュメトリックキャプチャとは、多数のカメラを並べて人物のパフォーマンスをあらゆる角度から撮影し、それをバーチャル化またはデジタル化して正確に再現し、没入型空間に配置する手法です」。
2018年にMetastageを創設したCEOのChristina Heller氏は、長い間メディアとテクノロジーの交差点に魅了されてきました。彼女は、2014年のサンダンス映画祭で、OculusのDK1ヘッドセットの最初のプロトタイプを試着しました。そこで感動したことが、このヘッドセット向けに仮想現実(VR)コンテンツを作るVR Playhouseを立ち上げるきっかけになったのです。
同社の画期的なクロスリアリティ(XR)アクティベーションは注目を集めました。そして、Heller氏はマイクロソフトのボリュメトリックビデオキャプチャ技術スタックを米国市場に投入するため、Metastageを立ち上げて主導することになりました。
Metastageは、Trigger XRのようなイノベーターと連携しています。Trigger XRは、ロサンゼルスに拠点を置く開発スタジオ兼複合現実エージェンシーで、Metastageと協力して、仮想旅行ツアーから世界的に有名なアスリートとの没入型ファン体験に至るまで、幅広いプロジェクトに取り組んでいます。
「当社のクライアントは、常に過去の実績と可能性の限界に挑戦しています」とHeller氏は述べています。「私たちは、メタバースで創造されるXRイノベーションの最前線にいるのです」。
Triggerの共同創設者でクリエイティブディレクターのJudd Kim氏は、初めてMetastageと一緒に手がけた仕事を忘れられません。それは、ある大手クルーズ会社が新しい豪華客船を導入したときのことでした。船旅を検討している人々に、船内の新たな特徴をリストで紹介するのではなく、CEOが船内を歩き回るホログラフィック映像を使ったバーチャルツアーでもてなしたのです。
このような没入型の体験は、視聴者を遠く離れた世界へと誘います。最近の例では、Molson Coors社の太平洋岸北西地域向けのTrigger Web ARプロジェクトがあります。ビールの缶をスキャンするだけで、3D環境と本物の360°映像を組み合わせた拡張現実体験により、川をジャンプしたり、アラスカを犬ぞりで走る感覚を味わうことができます。
コロナ禍により、アーティストやアスリートが生の聴衆の前でパフォーマンスができなくなったことで、XR体験の導入に拍車がかかりました。
「ボリュメトリックキャプチャのおかげで、パフォーマーはこの新しい手法を使って、個人的で、本物で、先進技術で、未来志向を感じられるメディアを制作できるようになりました」とSweetman氏は述べています。「大好きな歌手を観に行けなくても、ひとりの時間や、友達とソファに座りながら、バーチャルで制作された歌手のホログラフィックパフォーマンスをスマホにストリーミングすることができます」。
コロナ禍で試合に出場できなかった選手たちは、ファンと交流する新しい方法を模索していました。テキサス州ダラスのAT&Tスタジアムでは、ファンがスマホをスタジアムにかざすと、没入型体験により、好みのフットボール選手の「巨大な像」に出会うことができました。
Kim氏が最も気に入ったプロジェクトは、TriggerとMetastage、そして大手無線プロバイダーのパートナーシップによる革新的なARアプリです。このアプリは、XRと5Gを使用して、さまざまなスポーツのトップアスリートが「得意技」を披露するもので、加入者のみに提供されます。サッカー界のレジェンドのMegan Rapinoe、ゴルフプロのTony Finau、テニススターのSloane Stephensなど、スポーツ界の著名人たちがMetastageのスタジオを訪れて、キック、スイング、サーブなどを披露してくれました。このアプリを使用すると、ファンは自分とヒーローのフォームを比較したり、一緒に写真を撮る体験に没入することができました。
「まず、各スポーツ界で文字通り頂点にいるアスリートの名簿を作成しました。そして、Metastageのボリュメトリックキャプチャ技術を使用して、アスリートを360°すべてキャプチャし、ホログラムとしてどこにでも配置できるように構築しました」とKim氏は語っています。
ボリュメトリックキャプチャ技術を活用したアプリは、簡単に使うことができるとKim氏は説明しています。Triggerのような企業は、常に限界を押し広げ、新しい体験を消費者に届けようとしています。
「これらの企業は、Metastageのボリュメトリックキャプチャ技術を使用し、自社の5Gネットワークを活用する方法を見つけています。そして、5Gの電波が届く所ならどこでも、非常にデータヘビーなものやデータ集約的なものを消費者の手元のデバイスに届けています。本当に素晴らしいことだと思います」とKim氏は述べています。
ボリュメトリックキャプチャは、想像を超えた可能性を解き放ち、メタバース全体を結びつけます。そして、人々が互いに交流し、新しい場所を旅し、新しいことを体験する方法を変革します。
Kim氏は「何かとメタバースの話題には事欠きませんが、今は本当に実用に供するものを提供することが大切です」と話しています。「当社は、現実世界のメタバースに体験を提供すると共に、私たちが今しているリアルな体験に付加価値を与えているのです」。
このシリーズのパートIIでは、ボリメトリックキャプチャの舞台裏を見ていきます。近日公開予定です。お楽しみに!
著者: Anne Herreria
※Western Digital BLOG 記事(JUNE 21, 2022)を翻訳して掲載しています。原文はこちら。
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