2022年07月22日
これまでのゲームの在り方を変える: 学校でeスポーツ

高校生のJosh D.さんは、授業以外の週10時間以上をコーチやチームメイトとともにeスポーツの練習に費やし、試合に向けて準備をしています。試合は大規模なアリーナで行われることもあれば、バーチャルで行われることもあります。機器とユニフォームが与えられている彼らは、大学でもバーシティチーム(学校代表チーム)やクラブチームでこの道を進み続けたいと思っています。プレイヤーの中には、奨学金を獲得する者もいます。また、本人が望めば、これらすべてを快適な自宅からリモートで行うこともできるのです。
Joshさんは、高校のeスポーツチームの卓越したプレイヤーであるとともに、ロジスティクスディレクターでもあります。
eスポーツは、高校や大学のバーシティ競技として世界各地で行われるようになりました。
米国だけを見ても、3,400校、14万人以上の学生がHigh School Esports League(HSEL)に加盟しています。また、170校以上の大学、5,000人の学生アスリートを擁するNational Association of Collegiate Esports(NACE)は、毎年1,600万ドルの奨学金を支給しています。

eスポーツは実際にスポーツなのか

「これまでかなり長い間、eスポーツはスポーツなのかという議論がされてきました。結論から言えば、eスポーツにも従来のスポーツのようなドラマやライバル、激しい競争が存在するのです」と、Esports News UKの創設者兼編集者でありeスポーツコンサルタントであるDom Sacco氏はこのように述べています。最初のゲームトーナメントは1972年、米スタンフォード大学で行われたと言われています。
2022年2月に米ラスベガスで開催されたコンシューマ・エレクトロニクスの見本市「CES 2022」では、eスポーツがトピックに含まれていました。しかしこの2年前のCESでは、テクノロジー業界のリーダーたちが、eスポーツはスポーツなのかという議論を繰り広げていました。最近、あるゲーム大手は、初のeスポーツ担当プレジデントを任命しました。また、同社の別の幹部は、『Sports Business Journal』誌の「Forty under 40」に、従来のスポーツフランチャイズやスポーツ関連団体のリーダーとともに選出されています。
eスポーツをスポーツではなく単なるゲームと見なす国もありますが、国際オリンピック委員会は、昨年、初のオリンピック・バーチャルシリーズについて発表しました。

eスポーツ競技会のプレイヤーと観戦者(※写真提供: UCI)

米カリフォルニア州サンノゼのValley Christian Schoolsで「Applied Math, Science, and Engineering(AMSE)Institute」のコミュニケーションマネージャーを務めるDeborah Rigg氏は述べています。「eスポーツは、身体に依存しない競技環境に参加するチャンスを学生に与えてくれます。そこには、従来のチーム競技同様、コーチもいれば戦略やプレイブックも存在します」。
Valley Christian校でeスポーツプログラムマネージャーを務めるMatthew Boman氏は述べています。「学生はビデオゲームへの情熱をeスポーツに費やし、また大学や仕事に生かすことができます」。
将来心理学を学びたいと考えているJosh D.さんは、Valley Christian校のeスポーツチームに在籍する5人の学生リーダーの1人です。ほかにも、2人の女性リーダー、Joanna L.さんとXuan Z.さんが、それぞれ学生ディレクターと競技ディレクターを務めています。
Valley Christian校のeスポーツプログラムは、同校の「Applied Math, Science, and Engineering(AMSE)Institute」、体育科、芸術科による共同プロジェクトですが、テクノロジー面を重視するため、主にAMSEが運営しています。Boman氏は、大学でeスポーツプログラムが増えていることを知り、2018年度にeスポーツプログラムをクラブ活動として立ち上げました。現在、Valley Christian校の高等部は、eスポーツのバーシティ(学校代表)チームとジュニアバーシティ(準学校代表)チームを持ち、同校は今後、このプログラムを中等部にも導入することを検討しています。
Boman氏は述べています。「これはトリクルダウン効果です。eスポーツはこの4年間で5倍になりました」。
同校では、このプログラムの開始以来、毎年60~100人の学生がプログラムに参加し、14種類のゲームで試合をしています。学生の一部は、個人またはチームで全国大会に参加し、トーナメントに進みました。また、一部の学生は奨学金を獲得しています。たとえば、Maddenで3回優勝した最近の卒業生には、賞金としてベイラー大学から年2,500ドルの奨学金が支給されました。

大学を目指す

Checkpoint XP on Campusポッドキャストによれば、米カリフォルニア大学アーバイン校は、eスポーツ大学リスト上位25校の中でも上位に君臨しています。
UCIを最近卒業し、同大学でeスポーツ担当ディレクターを務めるMark Deppe氏は、5年間の学生生活の中でeスポーツの可能性を目の当たりにしました。UCIはゲーマーにとってトップランクの大学として知られ、そのクラブチームは全米トーナメントでの優勝経験もありました。彼は学長と理事会に掛け合い、当時としては初となるeスポーツアリーナの建設資金を確保しました。2016年秋に完成したUCI eスポーツアリーナは、36台のデスクトップコンピューターとゲームサーバーが設置され、現在、学生と一般市民に開放されています。

UCI eスポーツアリーナで競技をする学生たち(※写真提供: UCI)

「キャンパス内に改装可能な場所が見つかり、大学から見てコストに見合ったビジネスプランを作成したことで、計画にゴーサインがでました」とDeppe氏は述べています。
UCIにおけるeスポーツは、バーシティスポーツであり、学生課の管轄にあります。正式にはアスリート枠ではありません。なぜなら、プレイヤーは努力に応じて報酬を得ることができるからです。Deppe氏は、利益受給を禁じるNCAA(全米大学体育協会)のルールを挙げて次のように説明しています。「大学のバスケットボールのスタープレイヤーはYouTubeチャンネルの開設を許されていません。一方、我が校のeスポーツプレイヤーはトーナメントに出て500ドルを稼ぎます。これら2つを両立させることは困難です」。
学生が運営するクラブとは異なり、バーシティのeスポーツプログラムにはどのようなものが必要か、Deppe氏は明確に認識しています。「私の定義では、1人以上の有給のスタッフ、奨学金、有給のコーチが必要であり、できれば施設もほしいところです」と同氏は述べています。UCIのeスポーツプログラムには5つの柱があります。競技、学問/研究、コミュニティー、エンターテインメント、そしてキャリア開発です。

ゲームだけではない: eスポーツのキャリアパス

eスポーツには、プレイヤーだけでなく、観戦者やファンも存在します。これが、プレイヤーのその後のフィールドを広げます。
Sacco氏は述べています。「eスポーツのキャリアは、マネージメント、プロダクション、ホスティング、ジャーナリズム、マーケティングなど多種多様です。eスポーツは実際の仕事に結びつかないと考えられていましたが、有望なキャリアがあることを保護者たちが知ったことで、その考えは変わり始めました」。イギリスの一部の大学では、eスポーツの学位を与えています。British Esports Associationの支援を受けているCollege of Esportsは、eスポーツビジネスに特化した初の大学教育機関であり、2022年に開校の予定です。
Valley Christian校の学生は、エンジニアリングやゲームデザインだけでなく、グラフィックデザイン、イベント管理、デジタルストーリーテリング、シャウトキャスティング(実況アナウンス)などの他のキャリアにも関心を持っているとBoman氏は語っています。
Deppe氏によれば、UCIの学生アスリートの専攻科目はさまざまです。
「美術を専攻する生徒もいれば、社会学や政治学を専攻する生徒もいます。しかし最も人気なのは、コンピューターサイエンス、コンピューターゲームサイエンス、エンジニアリングです。UCIの卒業生は、eスポーツやゲーム関連業界、Visio、Twitchなどの企業や、プロスポーツチームに進んでいます」。
「学生たちは協力的な環境の中で仲間とともに好きなことができるだけでなく、学位も取得できます。情熱と教育の融合。これこそが最大の魅力だと思います」。

勝利を喜び合うeスポーツチーム(※写真提供: UCI)

もう1つのメリットは、チームの一員としてライフスキルを学べることです。UCIのeスポーツチームでは、コーチの指導を受けられるだけでなく、月に1回心理学者に会える機会があり、安全なスペースでメンターとともに問題に取り組むことができます。ゲームの世界では、オンラインハラスメントなどの問題がよく起こります。そのため、メンタルヘルス、チームダイナミクス、問題解決などのセッションは重要です。
Deppe氏は語ります。「私たちが生徒の成長をサポートするのは、ここで成長しなければ、その後の仕事や人生で道を誤る可能性があるためです。我が校のアスリートは互いにとても協力的です。相手への接し方やそうしたすべてのことに関して、我が校は明確な期待を持っています。しかしeスポーツの『GOボタン』を押しさえすれば、それが『自然に行われる』わけではありません」。

eスポーツを支えるデータ

クラウドゲーム、ストリーミング、AR/VRなど、その種類が何であれ、eスポーツのゲームやトーナメントを行うにはデータとストレージが必要です。
Deppe氏は述べています。「ゲームには、超高速な処理と、テラバイト単位のデータの格納が必要です。アスリートが自分の視点や対戦を録画すると、大量のデータが発生します」。
eスポーツのプログラムやトーナメントには、ストレージ以外にスポンサーも必要です。
ウエスタンデジタルは、League of Legends EU Masters、ヨーロッパのBLAST Apex Legendsトーナメント、大学生を対象としたWe.Gamer Dayイベント、アジア各地のWD_Black Cup Esports Tournamentなど、世界各地のトーナメントを後援しています。当社のWD_BLACKブランドは、ゲーマー向けにカスタマイズされた革新的なストレージソリューションとなっています。

著者: Anne Herreria

※Western Digital BLOG 記事(JANUARY 5, 2022)を翻訳して掲載しています。原文はこちら

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