2021年12月10日
データセンターの電力問題: データセンターはヒーローか、はたまた悪党なのか?

データセンターの電力消費量は、さまざまな消費者の中でも最大級で、世界の電力の2%を消費しており、航空業界全体とほぼ同量のCO2を排出しています。また、その電力消費量は、4年ごとに倍増し続けており、IT業界の中でも二酸化炭素排出量が急速に増加している分野となっています。

デジタルトランスフォーメーションが加速するにつれ、キャプチャ、保存、アクセス、変換されるデータの量は増加する一方です。IoTからAI、スマートシティー、自動運転車に至るデータ集約型のワークロードは、2025年までに1日に463エクサバイトが生成されるという現在の予測に拍車をかけると指摘されています。ケンブリッジ大学の分析によると、ビットコインの採掘だけで、アルゼンチン全土の年間消費量に匹敵する電力を消費します。負荷の高いアプリケーションはデータセンターで処理されます。AIだけ見ても、世界のデータセンターの電力使用量を2%から10%、さらには15%まで押し上げる可能性があります。かつてないほど接続が増えた今、データを移動させるだけでも多くの電力が必要になります。

全世界で800万を超えるデータセンターにとって、増え続ける膨大なデータを格納するための管理コストと環境への影響を最小限に抑えることが、最も困難な課題の一つとなっています。

幸いなことに、データセンターでは、電力消費、エネルギーコスト、さらには二酸化炭素排出量を削減するための対策が講じられています。

クラウドの巨人たちが道を切り開く

世界のクラウドベンダー大手いわゆる「クラウドの巨人」たちが、この流れの先頭に立っています。2021年1月に、マイクロソフトは2030年までに「カーボンネガティブ」になるという計画を発表しました。Amazon Web Servicesは、2025年までに再生可能エネルギーを100%使用することをコミットしています。Amazonのような企業が特に注目しているのは、データセンターのコンピューティング機器が電力をどの程度効率的に使用しているかを示すPower Usage Effectiveness(PUE)という指標です。Googleは、同社の全データセンターでPUEが1.1を下回っており、他社のデータセンターよりも消費電力が少なく、業界平均をはるかに下回っていると発表しました。

クラウドの巨人たちは、どのようにこの難関を乗り越えようとしているのでしょうか?

最大の取組みの1つは、化石燃料ではなく、風力、太陽光、水などの再生可能エネルギー源の活用です。彼らは再生可能エネルギーの購入者のトップであり、2019年の米国における上位6社のうち5社をテクノロジー企業が占めていることがわかっています。

もう1つの施策は、北欧諸国のような再生可能エネルギー源が豊富で、しかも寒冷な土地にデータセンターを移転することです。多くのクラウド企業が、フィンランド、デンマーク、スウェーデンに風力発電や太陽光発電のエネルギーハブを建設しています。

データセンターをまるごとクールダウン

データセンターを冷却するには多くの電力が必要になります。通常は、平均温度が20~26.6℃の間に保たれています。データセンターの総電力消費量の約30~50%を冷却が占めています。ネバダ州は、電力料金や税金を安価にするなどの優遇措置があるため、データセンターが集結する世界最大規模のホットスポットになっています。多くのデータセンターがネバダ州のような温暖な気候の地域にありますが、一方でクラウドの巨人の中には、アイスランドのような冷涼な地域にデータセンターを開設した企業もあります。

ウエスタンデジタルのエンタープライズHDD製品計画担当ディレクター、クリント・ルードマン(Clint Ludeman)は次のように述べています。「誰もが用地を追加購入したり、別の環境に移設する余裕があるわけではありません。移設の他にも、企業のデータセンターが消費電力を削減し、効率を最適化する方法はいくつか考えられます」。

データの密度が決め手: より多くのデータを、より少ない電力で

すべてのデータセンターは、膨大なデータを格納するためにストレージに依存しています。ストレージは基本的にデータセンターのバックボーンです。データセンターで稼働するすべてのドライブは冷却する必要があり、冷却は大量の電力を消費します。効率を上げる1つの方法は、一定のスペースの密度を高めることですが、ストレージに当てはめると、より高密度のドライブを使用することとなります。

大容量ドライブは、電力効率に劇的なインパクトを与えます。

ウエスタンデジタルのフィールドアプリケーションエンジニアリングのテクノロジストであるジョルジオ・イッポリティ(Giorgio Ippoliti)は次のように述べています。「ワークロードには、電力を大量に消費するものや、穏やかに消費するものがあり、ダイエットが必要なものもあります。ソリューションが消費する電力量には、I/Oパターン、転送サイズ、ドライブにキューイングされた要求の数などが影響します」。

イッポリティは、ヨーロッパの科学研究所が、22ペタバイトのデータリポジトリを比較する最近の取組みを支援しました。このテストでは、ウエスタンデジタルの前世代の12TBドライブと、最新のテクノロジーを搭載した18TB SAS HDDを比較しました。ウエスタンデジタルのハードディスクドライブ用に最適化された、ストレージプラットフォーム「Ultrastar Data102」のストレージエンクロージャに、102台のドライブを収納しました。

その結果、容量は50%増加し、消費電力は18%減少しました。「ウエスタンデジタルのエンジニアは、アルゴリズム、モーター、内部電源の改良などで画期的な成果を上げており、容量を増やしても電力は減らし続けています」とイッポリティは語っています。

軽元素

ストレージの消費電力を削減するもう1つの方法は、空気ではなくヘリウム(He)が充填されたハードドライブを使用することです。Heの密度は空気の1/7であるため、ドライブ内部の乱流が少なくなります。これにより、同じ3.5インチフォームファクタでより多くのディスクを搭載することができ、回転するディスクの抵抗が減り、最終的には消費電力を削減できるなど、さまざまなメリットが得られます。

ウエスタンデジタルの18TBのHe充填ハードドライブと10TBの空気充填ドライブを比較したところ、18TBドライブ(すでに容量が80%増加しラックスペースを最適化している)は、動作電力を30%削減し、TB当たりの電力が61%減少するなど、電力効率が大幅に向上しています。

スペースが鍵を握る

不動産は貴重であり、スペースの最適化は電力消費に影響を与えます。たとえフロアタイルの1つ、あるいは1平方フィートであっても最大限に活用できるように最適化する必要があります。

多くの企業がストレージサーバーやその他の機器のラックスペースをレンタルできるコロケーションデータセンターでは、スロット税などの要素がコストに影響します。ある企業の機器が、そのスペースに割り当てられている電力よりも多くの電力を消費すると、その追加分を支払うために、余分のフロアスペースをレンタルする必要が生じることもあります。

ウエスタンデジタルのデータセンターSSDフラッシュ担当シニアディレクターのスワプナ・ヤサラプ(Swapna Yasarapu)は、次のように述べています。「既存のスペースを最適化して最大限に活用すると、隠れていたTCOが削減されます。これは、「ネガワット」の概念と似ています。この概念では、より効率的に運用することで電力を削減でき、コストも節減できます。

データセンターには電力が付き物

データは世界最大の課題の一部を解決するのに役立ちますが、そのために必要な物理リソースが気候変動を助長してはいけません。データが真に私たちをより良い場所に導くためには、データセンターは膨大な電力消費という難題を解決する方法を見つける必要があります。組織がデータを効率的に保存しアクセスする方法を見つけた場合にのみ、データを真に活かすことができるのです。これは、物理的だけでなく、経済的にも環境的にもフットプリントを小さくするために努力すべきことを示しています。

著者: Anne Herreria

※Western Digital BLOG 記事(MARCH 24, 2021)を翻訳して掲載しています。原文はこちら

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